コラム

関節のすり減りを放っておくとどうなる?知っておきたい「歩行困難」へのリスク

こんにちは、院長の瀧澤です。前回の記事では、変形性膝関節症のセルフチェックについてお話ししました。

「関節が多少変形しても、痛みを我慢すれば歩けるでしょう?」診察室で患者さんからよくそんなお声をいただきます。しかし、変形性膝関節症の本当の怖さは、単に関節が痛むことではなく、それによって引き起こされる「生活範囲の縮小」にあります。今回は、関節のすり減りを放置することで起こりうるリスクと、現代医療で期待できるケアの可能性について詳しく解説します。

1. 痛みが痛みを呼ぶ「悪循環の連鎖」

関節の軟骨がすり減り始めると、関節の内部で摩擦が起き、炎症が発生します。この炎症が強い痛みを引き起こすのですが、人間は痛みを避けるために、無意識のうちに痛む側をかばった不自然な歩き方をしてしまいます。

すると、今度は反対側のひざに過度な負担がかかり、新たな痛みを引き起こす……というように、次々と関節の痛みが連鎖していくことがあります。痛みをかばって歩いているうちに健康だった関節まで傷めてしまうのは、非常にもったいないことです。

2. 関節の変形は「寝たきり」のリスクを高める?

あまり知られていないことですが、関節の痛みを放置して活動量が減ることは、将来的に「要介護(寝たきり)」になる主要な原因(ロコモティブシンドローム)へとつながっています。

ひざが痛いからといって家に閉じこもりがちになると、足腰の筋力が急激に落ちてしまいます。高齢の方の場合、筋力が落ちるとバランスを崩して転倒しやすくなり、結果として骨折などを引き起こして以前のように歩けなくなってしまうケースが少なくありません。関節の健康は、まさに「健康寿命」に直結する重要な土台なのです。

3. 「動かないと楽だから」という誤解

「動くと痛いけれど、じっとしていれば痛まないから治療は要らない」と勘違いして放置してしまう方が非常に多いのですが、実はここが運命の分かれ道です。

じっとしていれば痛みは感じにくいですが、関節の軟骨がすり減った状態は変わっていません。むしろ、関節を動かさないことで関節の周りの組織が硬くなり(拘縮)、ますます関節が曲がりにくく、伸びにくくなるという二次的な障がいを引き起こす原因になってしまいます。

4. 現代の医療で「進行」は止められる

ここまで少し怖いお話をしてきましたが、お伝えしたい最も大切なことは「変形性膝関節症は、正しく治療すればコントロールできる病気である」ということです。

ひと昔前までは「老化現象だから仕方ない」と諦められがちでしたが、現在は、関節の炎症を効果的に抑えるお薬や、関節の滑りを滑らかにする処置、さらには関節への負担を根本から減らす専門的なリハビリテーションも進化しています。

まとめ:まずは「現状」を知ることから

変形性膝関節症は、目に見えないところで静かに進行します。しかし、適切な検査を受け、ご自身の関節の状態を把握すれば、変形の進行を最小限に抑える対策が打てます。

「自分は大丈夫かな?」と少しでも不安を感じたら、まずは専門の医療機関を受診しましょう。次回のブログでは、具体的にどのような検査を行い、どのような治療法があるのかについてお話しします。