こんにちは、院長の瀧澤です。前回の記事では、骨粗しょう症のセルフチェックについてお話ししました。
「骨がスカスカになっても、転ばなければ大丈夫でしょう?」 診察室で患者さんからよくそんなお声をいただきます。しかし、骨粗しょう症の本当の怖さは、単に骨が弱くなることではなく、それによって引き起こされる「負の連鎖」にあります。
今回は、骨粗しょう症を放置することで起こりうるリスクと、現代医療で防げる未来について詳しく解説します。
1. 骨折が次の骨折を呼ぶ「ドミノ骨折」
骨粗しょう症が進行すると、ごくわずかな衝撃――例えば、くしゃみをした拍子や、布団を干そうと手を伸ばした瞬間、あるいは自分の体重を支えきれずに背骨が潰れてしまうことがあります。
これを放置していると、一つ折れた背骨の隣がまた折れる……というように、次々と骨折が連鎖していくことがあります。これを私たちは「ドミノ骨折」と呼んでいます。 背骨が何箇所も潰れてしまうと、背中が大きく曲がり、視線が下がって歩きにくくなるだけでなく、内臓が圧迫されて食欲が落ちたり、逆流性食道炎を引き起こしたりすることもあります。
2. 骨折は「寝たきり」のリスクが高い?
あまり知られていないことですが、骨折は認知症や脳血管疾患などと並んで日本人が「要介護(寝たきり)」になる原因となっています。
特に「大腿骨(太ももの付け根)」を骨折してしまうと、多くの場合で手術が必要になり、長期間の入院を余儀なくされます。高齢の方の場合、入院中に筋力が急激に落ちてしまい、リハビリをしても以前のように歩けなくなってしまうケースが少なくありません。
「骨を折っただけ」と思われがちですが、実は骨折は「健康寿命」にも直結する重大な出来事なのです。
3. 「いつのまにか骨折」の痛みは消えても、リスクは残る
背骨の圧迫骨折は、最初は強い腰痛を感じますが、数週間経つと痛みが引いてしまうことがあります。「あぁ、ただのギックリ腰だったんだな」と勘違いして放置してしまう方が非常に多いのですが、実はここが運命の分かれ道です。
痛みが引いても、骨がスカスカの状態は変わっていません。むしろ、一度折れた人は、折れていない人に比べて次の骨折を起こすリスクが数倍高まるというデータもあります。
4. 現代の医療で「ドミノ骨折」は止められる
ここまで少し怖いお話をしてきましたが、お伝えしたい最も大切なことは「骨粗しょう症は、正しく治療すればコントロールできる病気である」ということです。
ひと昔前までは「老化現象だから仕方ない」と諦められていた骨粗しょう症ですが、現在は、骨を壊す力を抑えるだけでなく、「骨を積極的に増やす」お薬も登場しています。
まとめ:まずは「現状」を知ることから
骨粗しょう症は、目に見えないところで静かに進行します。しかし、適切な検査を受け、ご自身の骨の状態(骨密度や骨の質)を把握すれば、骨折のリスクを最小限に抑える対策が打てます。
「自分は大丈夫かな?」と少しでも不安を感じたら、まずは専門の医療機関を受診しましょう。次回のブログでは、具体的にどのような検査を行い、どのような治療法があるのかについてお話しします。