トリガーポイント注射
対象疾患
- 肩こり
- 頭痛
- 腰痛
- むちうち
等多岐にわたる
トリガーポイント注射とは
トリガーポイント注射(trigger point iejection)は、体のさまざまな場所の痛みを緩和するため、ペインクリニック領域で行われる事の多い一般的な処置です。
トリガーポイントは筋肉の中で硬くなっている部位で、押すと強い痛みがあり、さらにその痛みが周囲に広がることを特徴とします。肩や頚、腰などのこりとして自覚されることも多く、触るとコリコリしています。
トリガーポイントは肩こりや腰痛、交通事故後のむちうち等、長引く痛みを抱える方の多くで見つかります。筋肉の損傷や使い過ぎによる筋拘縮であると説明される場合もありますが、正確なメカニズムの全貌は不明な部分もあります。
筋肉というのは、痛みの刺激を感じると収縮する性質があります。慢性的な痛みにより筋肉が収縮してさらに筋拘縮を起こし、痛みがもっと強くなるという悪循環がたびたび引き起こされます。トリガーポイントを伴う痛みが更なる痛みを引き起こし、トリガーポイントそのものもより強固になってしまう状態です。
このような痛みによる更なる痛みの連鎖を断ち切るために、トリガーポイントに対する治療が有効な場合があります。
東洋医学的な視点から見ると、鍼治療としてこのトリガーポイントに鍼を刺して治療します。
私たち麻酔科医は、局所麻酔薬を用いて、トリガーポイントに注射針を刺入し、そこに少量の麻酔薬を注入します。これによりその時点での痛みを取るとともに、筋肉の緊張を止め、更なる痛みを防いでくれます。
トリガーポイント注射の大きな強みとして、低侵襲性が挙げられます。細く短い針を用いて筋肉のみに注射するので、大切な血管や神経を傷つける恐れが少なく、また使用する薬の量も少ないので、薬の副作用も起きにくいと言えます。そのため、トリガーポイント注射は血液を固まりにくくするするお薬を飲まれている方でも安全に施工できます。(少し一時的なアザが出来やすい場合があります。)ペインクリニックにおけるブロックの王様ともいえる硬膜外ブロックが血液を固まりにくくするお薬を飲まれている方にはお受けいただけないこととは対照的です。
また、当院では27Gというとても細い注射針を採用しています。針の内径は僅かに0.22mm程度です。通常採血等に使われる21G針と比べると、径にして半分以下、断面積で1/4以下です。(G=ゲージ 針の太さを表す単位で、数字が大きいほど細い)そのため、注射自体は、全く痛くないとまではいきませんが、かなり痛みが苦手な人でも問題なく施行できる程度です。針の刺し方も工夫しており、少しでも苦痛なく治療を受けていただけるよう努力しています。「他のところでやったときより痛くなかった」と言ってもらえると非常に嬉しくなります。
トリガーポイント注射は単に麻酔薬の効果で痛みをとるだけでなく、ウォッシュアウト効果(wash out=洗い流し)と言って、局所の炎症物質を洗い流す効果や、局所の癒着を剥がす作用もあるので、麻酔薬の効果が切れた後も痛み剤和らいだ状態が続くと言われています。1回のみで治療が終了できることは多くありませんが、数回の注射を行うとだんだんと効果が長くなり、多くの場合は注射自体が不要になります。
トリガーポイント注射は適切な投薬やリハビリテーションと組み合わせると更に効果を発揮します。また、トリガーポイント注射の効果が不十分な場合には他の治療方法をご提案いたします。
多くの方は、怪我などで急に生じた痛みに対してはすぐに医療機関を受診されますが、長く続く痛みについては”どうせ良くならないから”と諦めて我慢してしまう傾向にあります。しかし、多くの場合、痛みは適切な介入により相当程度軽減することができます。トリガーポイント注射もその手段の一つと言えます。