整形外科

変形性股関節症

変形性股関節症

股関節は足の付け根にある関節で、太ももの骨:大腿骨が、骨盤にはまり込むような形になっています。関節の中では、それぞれの骨が軟骨で覆われていて、スムーズに動くことができるようになっています。この軟骨は年月とともに少しずつ擦り減っていき、軟骨が無くなってしまうと骨同士が擦れて動きが悪くなったり痛みを生じたりします。

変形性股関節症を引き起こす因子として、生まれつき股関節の形成が不十分である、臼蓋形成不全が挙げられます。また、過度に体重が重い人や、仕事で長年重いものを運ぶことが多かった人、股関節周囲の筋力不足も変形性股関節症を引き起こすリスクになります。

変形性股関節症の方は、立ち上がった時や歩き始めた時等に足の付け根が痛むことが多く、進行すると歩行そのものが困難になる場合があります。

変形性股関節症の治療は、大きく分けて保存療法と手術療法があります。

保存療法として、各種鎮痛薬の投与や、リハビリテーション、運動を含めた生活上の指導を行います。股関節周囲の筋肉を鍛えることは有効ですが、誤った運動の仕方でかえって悪化することもあるので、注意が必要です。水中ウォーキングや、器具を使った筋力トレーニングを選択することが多く、股関節を過度に開く動きや、股関節に衝撃がかかる運動は避けます。当院では、医師とリハビリテーションスタッフが協力して適切な処方、リハビリテーション、アドバイスをおこなっていきます。

手術療法は様々ありますが、現在は人工股関節置換術(THA: Total Hip Arthroplasty)が主流です。股関節を人工関節という機械に置き換える手術です。現在主流な人工関節は大腿骨側の骨頭を置き換える”ステム”という部分と、骨盤側に埋め込み受け皿の役割をする”人工臼蓋:カップ”という部分で構成されます。体の一部を機械に換えるとなると大げさな感じがして怖いと思うかもしれませんが、人工股関節置換術は非常に長い歴史のある手術です。今に近い形の人工股関節は1960年頃のイギリスで開発され、その後長い年月をかけて洗練されてきました。現在、機械の進歩や術式の改善により人工股関節置換術は成績が向上し、変形性股関節症に対する手術の大部分を占めるようになりました。

手術が怖いという気持ちは誰しもが持つものです。当然手術のリスクや術後の注意点もあります。しかし、人工関節置換術により、歩くのが困難だった方の身体機能が著しく改善する例は数多くあります。大切なことは、適切に保存療法を行いつつ、必要があれば適切な時期に必要に応じた手術を選択することです。当院ではそれぞれの患者様と十分に相談した上で、手術を行うことのできる病院への紹介を行っています。

また、変形性股関節症と区別しなければなからない病気もいくつかあります。

まず、有名なものとして関節リウマチが挙げられます。関節リウマチは自分の体に備わる免疫機構が体中の関節に炎症と破壊を引き起こす病気で、その一環として股関節の病変を含む場合があります。また、大腿骨頭壊死と言って、太ももの骨が壊れてしまう病気があります。お酒をたくさん飲む人やステロイドを使用している方に多い病気です。

化膿性関節炎といって、ばい菌が関節内で繁殖して感染を引き起こす病気もあります。これらの病気、特に化膿性関節炎は緊急性が高く、変形性股関節症よりも治療を急ぐので、正確で迅速な診断を要します。

股関節の痛みは、適切な診断と治療が必要になります。痛みや不自由を抱える患者様のお役に立てればと存じますので、お気軽にご相談ください。