ランナー膝
症状
ランナー膝の特徴的な症状は、活動時の痛みです。ランニングや歩行時、膝の外側に痛みが現れることが多いです。特に大腿骨外側上顆周辺での疼痛が目立ちます。この痛みは鋭い痛み、鈍痛、あるいは圧迫感として現れる場合もあります。
初期段階では、痛みは活動後に消えることが多く、安静にしていると痛みが軽減されます。しかし、症状が進行すると、安静時や日常生活においても膝の外側に痛みを感じるようになります。移動中の歩行時や階段の昇り降り、長時間の立ち仕事などでも痛みが生じることがあります。
ランナー膝の進行により、膝の運動制限が生じることもあります。膝の曲げ伸ばし動作や膝に負荷をかける動作時に痛みが現れ、結果として膝の可動域が制限されます。また、症状が進行すると、足の安定性や筋力にも影響が及び、走行距離の制限や運動能力の低下、脚力の欠如を経験することもあります。
上記のような症状が現れたら、なるべく早い段階で医療機関を受診することが望ましいです。
原因
ランナー膝の原因として、内的要因(自分自身)と外的要因(環境)の2つが考えられます。
内的要因
筋力の不足や、筋力のアンバランス、骨の成長と筋の伸びのアンバランスなどといった、身体の柔軟性の不足が原因として考えられます。
また、内反膝(O脚)も原因の1つとして考えられます。内反膝の人は、太ももから脛にかけて内側に曲がっていることから、膝の外側にある腸脛靭帯が大腿骨外側の出っ張りに擦れやすくなり、ランナー膝が引き起こされる要因となります。
外的要因
ランニング練習のやり方や環境の問題によってランナー膝が引き起こされる場合があります。
過度なトレーニングや体力などの身体能力に合わないトレーニング、硬すぎる・軟らかすぎる練習場でのトレーニング、不適切な靴の使用などが原因として挙げられます。
速いスピードでのランニング時は、地面に足がつく際に膝が曲がる角度が深くなることから、腸脛靭帯の摩擦は少なく、ランナー膝にはなりにくいと考えられています。
一方で、ジョギングや下り坂、雨の日のランニングなどは、地面に足がつく際に膝場曲がる角度が浅くなることから、腸脛靭帯の摩擦が多く、ランナー膝を引き起こしやすいと考えられています。
治療
ランナー膝の治療の基本は、患部の安静と運動療法です。治療の初期段階では、まずランニングを中止または軽減し、痛みを抑えるために患部の冷却や消炎鎮痛剤の使用が行われます。症状が重い場合には、炎症のある部位に局所麻酔薬やステロイドの局所注射が行われることもあります。痛みが改善すると、運動療法が開始され、少しずつ走行距離を増やしながらランニングを再開します。
また、ランナー膝の場合、内反膝や回内足を認めることがあれば、腸脛靭帯への負荷を軽減するために足底板の装着やテーピングが行われることもあります。特に足底板は、腸脛靭帯へのストレスを分散させ、痛みを軽減する助けとなります。
運動療法はランナー膝の治療において非常に重要です。ストレッチなどの運動を行うことで、腸脛靭帯の柔軟性が向上し、大腿骨突起部との摩擦や炎症を軽減する効果が期待されます。定期的なストレッチや強化運動により、腸脛靭帯の柔軟性を維持・向上させることは、再発の予防にも役立ちます。
当院では、医師の指示の下、理学療法士が患者様1人1人の症状に合わせて運動器リハビリテーションを行います。運動器リハビリの中では、ストレッチや筋力トレーニングを行い、症状の改善に向けて、理学療法士が皆様をサポートします。
ランナー膝の治療には、個人の症状や進行度に合わせたアプローチが必要です。医師や専門家の指導の下、適切な治療法やリハビリテーションを行うことが重要です。症状が現れたら、早期に医療機関を受診することが望ましいです。