整形外科

ヘバーデン結節(Heberden結節)

ヘバーデン結節(Heberden結節)

ヘバーデン結節は、指のDIP関節(distal intraphalangeal joing:俗に言う第一関節)の変形、腫れ、屈曲、痛みを生じる疾患です。

中指のヘバーデン結節 60代女性

病名は、18世紀英国の医師であった、William Heberden先生に由来するそうです。Heberden先生は、ヘバーデン結節以外にも、狭心症(angina pectoris)という病名をはじめてつけました。他にも、水痘(みずぼうそう)は一度かかると二度とかからないことなどを報告したそうです。

非常に広い範囲で沢山の重要な発見をした名医であったことが伺えます。なお、同様の病変をPIP関節(Proximal intraphalangeal joint:俗に言う第2関節)に生じるものをブシャール結節(Bouchard 結節)と呼び、しばしばヘバーデン結節と合併します。

ヘバーデン結節は典型的には中年期に発症し、男性よりも女性に多い疾患です。初期に痛みや腫れ、時に発赤を生じますが次第に落ち着き、指の形の変形が残ります。ヘバーデン結節の原因は不明な部分が多く、あまり解明されておりません。長らく手の使い過ぎが原因とされ、手をよく使う職業の人に多いとか、利き手に多いという報告もあります。近年は女性ホルモンの変動により引き起こされるという説もあり、女性では50歳前後で急激にエストロゲンというホルモンが低下する為にヘバーデン結節を生じやすくなるともいわれています。

へバーデン結節の痛みは時間とともに軽快しますが、炎症や痛みが強い場合は、適切な固定を行ったほうが良い場合があります。また、内服薬や外用薬を使用したり、当院では温熱超音波を用いた物理療法も行っています。

当院の温熱超音波治療器

ヘバーデン結節の痛みがあまりにもひどい場合には手術で関節を固定してしまう場合もありますが、こうすると関節が曲がらなくなって不便でもあるため、実際に手術をする症例はあまり多くありません。

上記のエストロゲン仮説に基づき、エクオールというサプリメントに期待している人もおられます。エクオールはエストロゲンに似た構造を持つ成分で、減少したエストロゲンを補うのではと言われています。そのほか、エストロゲンを調整する薬剤などはいくつかありますが、残念ながら令和5年7月現在、このタイプのお薬でヘバーデン結節に対して保険適応のものはございません。

ヘバーデン結節と同じく中年期以降の女性に多く、手指の痛みを生じる疾患に関節リウマチがあります。多くの場合にはヘバーデン結節と関節リウマチは見分けがつきますが、紛らわしいケースもあります。関節リウマチは診断が遅れると、全身の様々な関節が変形してしまったり、肺などの内科的な問題を引き起こすこともあります。関節リウマチとヘバーデン結節では治療方針が全く異なってくるため、採血や超音波検査を駆使して可能な限り早く診断する必要があります。その為、手指の症状がある場合、早めの医療機関受診が望ましいでしょう。

このような症状にお困りの方がいらしたら、お気軽にご相談ください。