ドケルバン病
症状
ドケルバン病(ドケルバン腱鞘炎)は、親指の酷使によって、親指の付け根から手首にかけて痛みや腫れが生じる病気です。
この病気の主な症状は、手首の親指側に現れる痛みや腫れです。特に、手首をひねる、物をつかむ、こぶしを握るといった動作を行う際に痛みが強まる傾向があります。また、親指を動かそうとした際に、引っかかるような感覚や、突っ張るような感覚を覚えることもあります。
症状が進行すると、親指や手首に力が入らなくなることもあります。さらに、適切な治療を受けずに放置すると、痛みが手首だけにとどまらず、親指の付け根からひじの方まで広がるケースも見られます。
こうした症状に心当たりのある方は、日常生活での痛みを我慢したり、症状を放置したりせず、お早めに医療機関を受診されることをおすすめします。早期に適切な診断を受けることで、症状の悪化を防ぎ、スムーズな回復が期待できます。
原因
ドケルバン病は、親指を頻繁に使うことで、親指を動かすための腱が通るトンネル状の組織(腱鞘)に炎症が起き、発症すると考えられています。
この病気の原因となる腱鞘は、特に手首の親指側の部分にあり、2種類の腱が通っています。過度な使用によって腱がこすれたり、厚みが増したりすると、腱鞘の内部が狭くなります。すると、狭くなったトンネル内で腱の滑りが悪くなり、さらなる摩擦や炎症を引き起こす悪循環に陥り、痛みや腫れなどの症状が現れます。
特に、妊娠中や出産後の女性、そして更年期の女性に発症しやすい傾向があります。更年期には、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌が減少します。このホルモンは腱や靭帯を柔軟に保つ働きがあるため、減少することで腱が硬くなり、ドケルバン病を発症しやすくなると考えられています。育児や家事などで手を酷使することも、発症の大きな要因です。
また、日常生活や仕事で手を頻繁に使う方も注意が必要です。例えば、長時間のパソコン作業、スマートフォンやゲームの使いすぎなどが挙げられます。さらに、テニスやバドミントン、ゴルフなど、ラケットやクラブを握るスポーツをする方も、手首や親指に負担がかかりやすいため、発症のリスクが高まります。
治療
ドケルバン病の治療は、症状の程度や進行具合によって、いくつかの段階があります。
1. 保存療法
症状が軽度の場合、まずは保存療法が中心となります。炎症を抑えるために、湿布や塗り薬を処方します。同時に、手首や親指の安静を保つために、シーネ固定やサポーターを使用します。患部を温める温熱療法も効果的です。
また、痛みが強くない時期や回復期には、ストレッチも有効です。手首からひじにかけての筋肉をほぐすことで、症状の改善を促します。たとえば、手のひらを横に向けた状態で、手首をゆっくりと左右に倒すストレッチなどがあります。回復期には、こうしたリハビリを通して、元のスムーズな動きを取り戻すことを目指します。
2. 注射療法
保存療法を続けても痛みが改善されない場合や、痛みや腫れが強い場合には、注射による治療を検討します。これは、炎症を起こしている腱鞘内に直接薬を注入することで、炎症を抑え、痛みを和らげる方法です。
3. 手術療法
保存療法や注射を繰り返しても効果が見られない場合、根本的な解決のために手術を行うことがあります。ドケルバン病の手術は、主に局所麻酔下で行われます。症状の原因となっている腱鞘の一部を切開し、狭くなった腱の通り道を広げることで、腱の滑りをスムーズにし、痛みを解消します。
手術後のリハビリも重要です。抜糸後も指の動かしにくさが残る場合は、医師の指導のもと、日常的にリハビリを続けることで、よりスムーズな回復を目指します。
手術が必要な場合、専門医療機関をご紹介させていただきます。