ばね指(弾発指)
ばね指の正体は、指の根元の腱鞘炎です。指を動かす筋肉は、実は前腕にあります。指そのものには指を動かす筋肉はついていません。前腕の筋肉から細い腱が指の先に向かって伸びており、この前腕の筋肉の働きで指を曲げ伸ばしできるのです。この腱の腱鞘炎がおこると、指がスムーズに曲がらなくなったり、伸びなくなったりします。曲げようとすると抵抗があり、力を入れていく、もしくは逆の手で引っ張ると、あるところでカクンと一気に曲がるといっなような挙動をします。このカクンと曲がるとき、伸びる時に強い痛みを伴う場合があります。ばね指は、医学的な用語で弾発指ともよばれます。
ばね指はひどくなると、全く曲がらなくなったり、逆に伸びなくなったりします。こうなると痛みだけでなく、著しい生活の不便を生じることがあります。
ばね指は症状に変動があり、多くの人では朝に強い症状を認めます。朝に手を動かしにくくなる疾患として、ばね指以外で代表的なものに関節リウマチがあります。治療方針が全く違うので見分ける必要がありますが、しばしば関節リウマチにばね指を合併する場合もあります。
また、糖尿病を患っている方は複数の指にばね指を生じやすいことも知られています。
ばね指の治療は、まず適切なリハビリテーションをおこなったり、自分でエクササイズやストレッチをおこなって症状の改善を図ります。各種リハビリ機器を併用しながらのマッサージを行ったりすることは有効です。また、少し痛いのですが、ご自分で指を手の甲側に引っ張ってみたり、指の第一関節を伸ばして第二関節だけを直角に曲げた状態で何かを握り込むようなエクササイズ等、効果があると言われているいくつかの運動があります。
ばね指の原因となっている腱鞘炎の起きている場所(A1 pullyと呼びます)にステロイドの注射を行う場合もあります。ステロイドは局所で強力に炎症を抑え、比較的即効性をもって症状が改善することも多いのですが、短期間に何回も打つと組織を傷めてしまう場合もあるので、タイミングが大切です。一般的に痛いと言われるばね指の注射ですが、当院ではエコーを見ながら必要最小限の深さに注射を打つことで、痛みの少なさと治療効果を両立できます。
何度も注射が必要になってしまう方や、手術をご希望の方には、近隣医療機関をご紹介し、手術に踏み切る場合もあります。整形外科領域の手術としては比較的短時間の手術で、多くの場合は全身麻酔も不要です。
ばね指は非常に頻度の高い疾患ですが、的確な診断、リハビリテーション、治療により、治癒や症状の改善が望めます。指が動かしにくいという方は、お気軽にご相談ください。