高脂血症(脂質異常症)
高脂血症(脂質異常症)は、血液内の脂質バランスに異常を来す疾患です。
健康診断でコレステロールや中性脂肪が高いと指摘されて受診される患者さんは多くいらっしゃいます。
従来高脂血症と呼ばれていましたが、実際には特定の脂質が低くなることによる問題含むので、より正確に脂質異常症と呼ぶことが多くなりました。
主に、
- 高トリグリセリド血症: トリグリセリド(中性脂肪が高くなってしまう。
- 高LDL血症: LDL (いわゆる悪玉コレステロール)が高くなってしまう
- 低HDL血症:HDL(いわゆる善玉コレステロール)が低くなってしまう
に分けられます。
実際には複数を合併していることが多いと言えるでしょう。
また、それぞれの値だけでなく、LDL/HDL比と言って、悪玉コレステロールと善玉コレステロールの比も重要な指標です。
それぞれのコレステロール値がギリギリ正常でも、二つを合わせたバランスとしてはあまりよくない、と言うこともあり得ます。
この他に、世界保健機構 WHOが提唱する、リポタンパクの一種であるVLDLやIDLの分画によりⅠ,Ⅱa,Ⅱb,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴの6群を規定する分類法もあります。こういった分類は体内の脂質代謝を理解する上で重要ですが、実際の外来診療で用いることは稀です。
そもそも、脂質異常症は何が問題なのでしょうか?
脂質異常症自体の症状は乏しいと言えます。
「なんか今日コレステロール高いな〜」と言っている人はあまり見たことがないと思います。
脂質異常症は、知らず知らずのうちに全身の血管を傷める”動脈硬化症”を促進します。動脈という血管の内側に粥腫(じゅくしゅ)というコレステロールの塊が沈着していき、血管の中が狭くなっていきます。こういったメカニズムで起こる動脈硬化を”粥状硬化症”と呼びます。
動脈は全身の臓器に酸素や栄養を届ける大切な血管ですが、コレステロールの沈着で内側が狭くなると、流れる血液の量が減っていきます。
例えば心臓を栄養する冠動脈が狭くなると、心臓に供給される血液が少なくなります。運動をして心臓の鼓動が速くなったりした時に冠動脈の血流が不足するため心臓が酸欠になり、胸の痛みや苦しさを生じることがあります。これは”労作制狭心症”と呼ばれます。
さらにこの粥腫が大きくなって破裂すると、そこに血の塊である血栓ができて、完全にそこの動脈が詰まってしまいます。そうなると、脳で起これば脳梗塞、冠動脈で起これば心筋梗塞といったような、生命やその後の生活に関わる重大な病気を引き起こしてしまいます。
また、上まぶたの内側に黄色腫という黄色い塊ができる人がいます。中年以降の人に多く、脂肪を含んだ組織で、特に害のあるものではありませんが、見た目を気にする方もおられます。
これも脂質異常症にできやすいので、気になる方は要注意です。
多くの場合、脂質異常症の原因は主に生活習慣です。
バランスの取れた食事、節酒、禁煙、適度な運動、十分な睡眠といった、一般的な生活の注意は欠かせません。
しかし、言うは易しで、実際には仕事や家庭と両立しながら理想的な生活習慣を維持できる方は多くありません。また、年齢と共に脂質異常症を発症しやすくなりますし、脂質代謝には個人差があるので、頑張ってもなかなか正常化しない、と言う方もいらっしゃいます。
こういった方は、適切なお薬を使うことで脂質異常症を治療し、将来の重大な合併症を防ぐ必要があります。
「一度飲み始めると一生飲まなければいけないから・・・」といってお薬を嫌う方もいらっしゃいますが、実際には脂質が十分正常化すればまた薬を少しずつ減らしていくこともあります。生活改善ができればお薬を完全にやめられる場合もあるので、必要があればしっかり治療していったほうがいいでしょう。
中には、生まれつきの代謝異常によりどうしても若い頃から高コレステロール血症を来す患者さんがいます。
“家族性高コレステロール血症”と呼ばれ、こういった方は殆どの場合にお薬が必要になります。家族性高コレステロール血症については、内服だけでコントロールができず、より高度な治療を要する場合があります。
脂質異常症は、肥満、糖尿病、高血圧と互いに影響し合い、体に種々の悪影響を与えます。この4疾患は”死の四重奏”という物騒な名前が付けられており、なるべく健康で不自由なく長生きする為には、しっかりと管理していく必要があります。
気になる方はお気軽にご相談ください。