コラム

sglt2阻害薬とは

昨今、糖尿病の薬は多くの選択肢があります。

その中でも、SGLT2阻害薬(フォシーガ、スーグラ、カナグル等)は面白い薬だと思います。

糖尿病というのは、ざっくり言えば栄養がありすぎて困ってしまう病気です。しかし、人類の歴史、生物の歴史として、我々のご先祖様は、食べ物の不足に苦しんできました。人類の歴史は飢餓の歴史なのです。

SGLT2というのは、腎臓の尿細管で糖を再吸収する作用を持ちます。貴重な栄養である糖をみすみす尿として失わないために、腎臓で回収しているのです。
ところが、現代人は概ね栄養過多で困っています。糖尿病の方に食事を減らすようにお願いしても、なかなか思うように減らせないことがあります。

SGLT2阻害薬は、このSGLT2に作用することにより、糖を回収せず、あえて尿の中に糖を捨てる作用があります。

下記の研究で、SGLT2阻害薬の一種であるdapaglifrozin:商品名フォシーガ 1日10gを内服した場合、尿に排出される糖は日本人以外では1日に85gですが、日本人では111gと比較的多いことが報告されています。

Urinary glucose excretion after dapagliflozin treatment: An exposure‐response modelling comparison between Japanese and non‐Japanese patients diagnosed with type 1 diabetes mellitus – Sokolov – 2019 – Diabetes, Obesity and Metabolism – Wiley Online Library

これは日本人では1日に444kcalに相当するカロリーをカットできている計算になります。

1型糖尿病の方を対象にした研究なので、必ずしも全ての患者さんに適応できるわけではありませんが、日本人ではこの薬が効きやすいことが示唆されます。

仮に111gの糖を体の外に排出出来るとすると、概ねコンビニのおにぎり3つ分くらいに相当する糖質をカットすることができると言えます。

ビールで言うと、サッポロ黒ラベルの糖質がが100mlあたり2.9gです。500mlロング缶で14.5gの計算です。

こうしてみると、その7缶3.5l以上に当たる111gというのは相当な量であるとご理解いただけるでしょう。

SGLT2阻害薬は、糖尿病の薬としてとても有用なだけでなく、糖質の吸収を抑えるためにダイエットに用いられることもあります。

ダイエット目的の使用に関しては一般的に保険適用になりませんが、ご希望の場合にはご相談いただければと存じます。

当然、SGLT2阻害薬にも欠点はあります。まず、糖分は細菌にとっても栄養になるので、おしっこに糖を排出することになるSGLT2阻害薬は尿路感染のリスクを伴います。これは特にそもそも尿路感染の多い女性では問題になり得ます。
また、尿量が増えるので、十分な水分を摂取しないと脱水のおそれがあります。

うまく付き合えばとても有用なお薬なので、是非ご相談いただければと存じます。