昨今の日本は、筋トレブームと言っても過言ではないでしょう。
一昔前、この国において筋トレは一部の酔狂な人達が行う特殊なトレーニングでした。
アスリートですら、”競技に必要な筋肉は競技でつける”と言って、筋トレは邪道と扱われていました。
現在youtubeで活躍している、超人気芸人の”なかやまきんきくん”さんも、ご自身がボディビルを始めた20年ほど前はジムも少なく、筋トレの情報は殆ど日本に入ってこなかったと発言されており、今日の日本とはまるで様相が違うことが示唆されています。
筋トレは今やアスリートやボディビルダーだけのものではなく、老若男女全ての人が、それぞれのレベルで、健康の維持促進や体型のキープ、アンチエイジングの一環として生活に取り入れるべきものであると言えるでしょう。厳密には心臓や胃腸など、内臓にも筋肉は含まれますが、ここでいう筋肉は”骨格筋”と言って、骨についていて関節を動かす筋肉のことを言っています。
そもそも筋肉をつけることに何の意味があるのでしょうか?
まずは見た目の問題。
これは好みもありますが、やはり適度に筋肉が発達した逞しい体は年齢性別問わず魅力的ですよね。
筋肉でゴツくなるのが嫌だ!という女性もいますが、そもそも女性は筋肉がつきにくく、見るからに筋肉質でムキムキな状態というのは相当な努力か才能がない限り達成できませんので、初心者トレーニーにとっては杞憂と言えるでしょう。
次に、筋肉をつけると痩せやすく太りにくい体なります。
筋トレ自体の消費カロリーは大したことありませんが、筋肉が増えると体の基礎代謝が上がります。
基礎代謝とは、何もしなくても生きているだけで消費されるカロリーのことです。”今日はお休みで特に仕事も運動もしてないし、ご飯は何も食べなくてもいいかぁ”とはなりませんよね。人間は何も行動しなくてもエネルギーを使います。心臓を動かしたり、体温を調節したり、体は常に働いています。実はこの基礎代謝は、1日の総消費カロリーの6割ほどを占めます。その中でも筋肉は何もしなくても大量のエネルギーを消費する大食漢なんです。筋肉が増えれば、基礎代謝が増えて、何もしていない時にもより多くのエネルギーを消費するので、痩せやすくなります。
反対に、食事制限だけで痩せようとすると、筋肉も減ってしまい、逆に太りやすい体になってしまいます。
これが、いわゆるリバウンドの原因の一つなのです。
そして、筋肉は関節を保護する役割もあります。例えば、多くの方が中年期以降に膝の痛みを覚えます。この最も多い原因の一つが”変形性関節症”です。加齢や怪我、使い過ぎなどの原因で本来膝のクッションの役割をする軟骨が削れ、骨同士がぶつかることにより痛みや腫れを生じる疾患です。膝の変形性関節症の予防や症状改善には、太ももの前側の筋肉、”大腿四頭筋” (だいたいしとうきん と読みます)を鍛えることが有効なのです。膝以外でも、十分な筋肉は関節を保護してくるのです。適切な筋トレとストレッチが、体の節々の痛みに効果的である例は枚挙にいとまがありません。
さらに、筋肉は、血糖値を改善させ、糖尿病の予防やコントロールの改善にも役立ちます。
糖尿病患者さんのほとんどは2型糖尿病に分類されます。通常、インスリンというホルモンが血糖値を下げるはたらきをしますが、2型糖尿病の方はインスリンが効きにくなっています。これをインスリン抵抗性といいます。骨格筋の増加はインスリン抵抗性を改善させるので、筋トレは糖尿病の予防や治療にも効果的なのです。
筋トレは、必ずしもジムに行って重いバーベルを持ち上げる必要はありません。
例えば、椅子に深く腰掛けて、膝をピンと伸ばして足首を持ち上げるだけでも、自分の脚の重さで大腿四頭筋が鍛えられます。
その目的や生活スタイルに応じて、上手に筋トレを暮らしの中に取り込んでいけば良いのです。
院長の私も、ベンチプレス120kg程度、スクワット160kg程度をはじめとして、全身の適度な筋トレを日課にしています!
医者の不養生とはよく言ったものですが、健康のスペシャリストである医師こそ、自らの生活で実践してこそ説得力が生まれるものと考えています。
医師の診察やリハビリテーションスタッフを通して、筋トレをはじめとした生活のアドバイスもしておりますので、お気軽にご相談ください!