コラム

痛みって何?

ペインクリニックは、痛みを取ることに主眼を置いた診療科です。

そもそも痛みってなんなのでしょうか?

痛みは何のためにあるのでしょうか?

腰や首、肩などの痛みに日頃悩まされている方にとって、痛みというのは本当に忌々しいものです。

痛みなんて感じなければいいのに・・・と思ってしまうのももっともです。

しかし、本来痛みというのは非常に大切なものです。体に起こった異常や危険を教えてくれるシグナルなのです。

痛みという不快なシグナルを介して人は危険を察知し、それを回避するように学習します。

何か尖ったものが皮膚に当たったり、関節に無理な力がかかると痛みが走り、人はそれを避けようとします。

実は世の中には、先天性無痛症というとても珍しい病気があります。先天性無痛症の方は、生まれつき痛みを感じることができません。そのため、無理な体の使い方をして股関節や肩関節の脱臼を繰り返してしまう傾向にあります。これをシャルコー関節といいます。これにより徐々に歩く能力を失い、電動車椅子を必要とする場合も多いと言われています。

また、普通の人よりも口の中を噛んでしまいやすく、舌や唇もひどく損傷してしまうことが多いのです。

痛みを感じることも我々が生きていく上で必要なものであることがわかりました。

しかし、世の中には色々な種類の痛みがあります。

医学的には

  • 侵害受容性疼痛
  • 神経障害性疼痛
  • 心因性疼痛

の3種類に分類されます。

前述した先天性無痛症やその他の感覚障害を有しないほとんどの方は、歩いている時に足を固いものにぶつけたら当然痛いでしょう。口の中を噛んで傷つけてしまったり、熱い鍋を触ってしまった場合も痛みを感じます。

こういった痛みを専門用語で侵害受容性疼痛と呼びます。

外傷や熱傷による痛みは基本的に侵害受容性疼痛です。疾患で言うと、変形性関節症による膝や股関節の痛み、関節リウマチによる節々の痛みも、実際に炎症や組織の破壊が起きていることによる侵害受容性疼痛になります。

侵害受容性疼痛は、その原因が取り除かれれば消失します。また、一般的な痛み止めが有効なことが多いです。トリガーポイントブロックや関節内注射、ハイドロリリース等が有効な症例もあります。

次に神経障害性疼痛は、局所に明らかな外傷や炎症がないにも関わらず、神経の損傷により痛みや痺れがあらわれるものです。

神経障害性疼痛としてよく見られるものとして、お尻から足の外側に痛みやしびれがでる坐骨神経痛や、椎間板ヘルニアによる腕、脚の痛み、帯状疱疹後神経痛(帯状疱疹の後に残るピリピリした痛み)が挙げられます。

神経障害性疼痛は長きにわたって痛みが残ることが多く、治療が遅れるほど治りにくい可能性があります。また、一般的な痛み止めは効きにくく、プレガバリン(商品名リリカ)や、ミロガバリン(タリージェ)といったような、皆さんに馴染みの薄い特殊な痛み止めが必要となるケースが多いのです。

場合によっては硬膜外ブロックのような特殊な処置を行う場合もあります。

心因性疼痛は、ストレスや不安などの心理的要因で惹起される痛みです。いわゆる脳の問題なのですが、実際には上記二つの種類の痛みと組み合わさって起こることが多いのです。人間は長い期間痛みに晒されていると、その痛みを強く記憶してしまい、心因性疼痛

という形で慢性痛に移行してしまう場合があるのです。

一口に痛みといっても、そのメカニズムや原因によって治療のアプローチは変わってきます。

また、市販されている一般的な痛み止めも、胃潰瘍や腎不全、肝障害など重い副作用を生じることがあり、効いているとしても漫然に飲み続けるのは危険です。

各患者様に合わせた治療をご提案いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。